感想メモ

ひゃっほう

読了メモ 2023年2月分

2023年2月


アヒルと鴨のコインロッカー伊坂幸太郎

あらすじが説明できない。強いて言えば「大学入学のタイミングで田舎から出てきた主人公が、引っ越し先のお隣さんの怪しいイケメンに『広辞苑を盗みにいこう~よ』と言われて、駄目だよそんなこと~と言いつつ流されるままに本屋に襲撃にいく」なんだけど、これって一部分にすぎなくて、たしかに物語の根幹ではあるけど、う~ん!!!!これの3倍は要素がある。とにかく複雑だった。びびっちゃう。

最後の方で、序盤に張られてた伏線をワッサワッサと回収していくのでウワ~気持ちいい~!!!!!!ってなる。両腕でかき集めてんのかと思ったわ。「このセリフってあれじゃん!!」ってなって何度もページを戻って確認しては「ぎゃ~っ!!!!」ってなる。オチも切なくて秀逸。さすが、大人気なだけありますわ、伊坂幸太郎

河崎、好きすぎる。河崎……。

 


地球星人/村田沙耶香

とにかくマジでキモかった。いい意味で、と言ってあげたいけど普通に悪い意味でキモい。キモくて面白かった。

主人公は女性で、仕事とか家庭とかあらゆる「社会」の仕組みに疑問を持っていて、というかキモいなと思ってて受け付けられなくて、次第に社会を「人間を作る工場」と思うようになり、そのうち「自分は余所の惑星から来た生物で、この星で生まれたわけではない。地球星人に監視・支配されている」と思うようになる話。それに同調する人や、「馬鹿なこと言ってないで、いい年なんだから早く結婚して子供を産め」と言ってくる人や、まぁとにかく「ウワァ~!!!!!」のオンパレード。最終的に「そうはならんやろ!!!!」という終わりになるけど、その終わり方がめちゃくちゃ怖い。

コンビニ人間読んだときも思ったけど、この人、人間嫌いすぎだろ。人間が憎くないと書けないだろこんなの。

 

東京百景/又吉直樹

又吉のエッセイだった。上京してからのいろんな思い出の場所と、そのエピソードを100個書いてある。すごい面白かった。やっぱ芸人さんの文章っていいですね。

文章もそうなんだけど、そもそものエピソードが「そんなこと普段ねーだろ」みたいなことばっかり。類は友を呼ぶというか、面白い人には面白いことが集まるんだなとちょっと羨ましくなる。まぁ、些細なオモシロを面白い文章にする力があるのも羨ましいよ。

 

去年の冬、きみと別れ中村文則

こりゃあすげ~やとなります。

とある死刑囚(女を二人焼き殺した)の本を書くために取材してるライターが、その死刑囚の姉と会ったりして徐々に事件に巻き込まれていく……みたいな話なんだけど、いや、まぁ事件は終わってるんだけど、尾を引いてる何かが……みたいな。うん。あんまり言うと面白くなくなる本。記憶消してもう一回読みたい。

叙述トリックなんだけど、わざと「あれ?おかしいな…」くらいは気づけるような書き方をしてくれるから、読んでる途中もずっと「あれは何だったんだ?」って気にしつつ楽しめるから親切やなと思う。でも気づいてもらえないことも多いようで、中村文則は自分で張った伏線をあとがきで解説するという面白い男。そんな同人誌みたいなあとがきある??

 


何もかも憂鬱な夜に/中村文則

このあたりから中村文則の作品の共通項が「主人公が男」「主人公が犯罪者か、もしくは犯罪者を調査(観察)する人物」「主人公の幼少期の家庭環境がよくない」「主人公が喫煙者」「主人公が未成年の場合、いつも性的欲求に駆られている。成人の場合は「衝動的な性的欲求に駆られて破滅しようとしている」と自分を思い込ませて行為に及ぼうとする」だと気づき始める。中村文則の中で性欲が何かのキーポイントになってるらしい。あと、主人公がよく酒の飲みすぎで二日酔いになってる。あとすげぇ路上喫煙してる。

主人公は看守で、とある死刑囚の担当についてる。その死刑囚はまだ若くて、控訴もせずに死刑を受け入れている。で、なんとなく主人公はその死刑囚にシンパシーを感じている?というか親身になりたいと思っている?というか微妙な距離感なんだけど、まぁその死刑囚を見てて自分のいろんな過去を想起してグッタリしていく……みたいな話。読んでるこっちがグッタリする。